エンジニア
蜷川 悦子はサイバード女性エンジニアのリーダー的存在です。女性エンジニアがもっと増えていけばいいな、もっと多くの仲間を作っていきたいな。そう願う蜷川は、自らの手で女性が働きやすい環境を作り上げていくことを目指しています。清淑な中にある熱い想いを今、語ります。
エンジニアとの出会いとこれまでの道のり
蜷川は幼いころから、新しいものに触れることが好きでした。特にガジェット系など機械ものが好きだったと言います。
通っていた中学校では、その当時としては珍しく、パソコンの授業がありました。まだパソコンが一般家庭に普及しているような時代ではありませんでしたが、文章を打ってみるなどパソコンの扱いを学ぶためです。そこからパソコンを触ることに楽しさを感じ、以来どんどんとパソコンに興味を持つようになっていきました。
蜷川 「高校からは情報系の学校に進みました。そもそもスマホもなかったですし、携帯電話はまだまだ高価な時代です。ポケベルが絶頂期だったころでしょうか。新しい機械が出てくると、自分にはなかなか手の届かない楽しそうなものだという風に映ることが多かったですね。今思えば手に届かないものにさわれるので、工業系でプログラミングを学ぶのはいいなという感じでした」
父親から「これからの時代、女性は手に職を持たないと厳しい時代になる。工業系の高校に行くのであれば、そのまま手に職が持てるようなことを勉強し続けるほうがいいんじゃないか?」と言われたこともあり、長年情報系の勉強を続けてきた蜷川。
卒業後の進路では、早く社会に出て実戦で学ぶことを選択しました。
蜷川 「最初の会社に入るとき、『とりあえず三年間同じ会社に行って頑張ってみないと、自分の中で蓄積できるものはなかなかないよ』という話をよく聞いていました。なので、3年間を過ごすのが一番きつそうな会社を選びました(笑)。とりあえず自分が学べる、蓄積できるものを増やしていこうぐらいにしか当時は思っていなかったんですよね」
入社してみると、仕事は思いのほか大変でした。ただ、そこでの経験が自分の基礎になっている部分でもあり、今の仕事に対して引き出しを増やせる場所になったと言います。
経験したいという想いを行動に移し、築いてきたキャリア
当初考えていた通りその会社で3年間を過ごした後、転職を決意した蜷川。
高校時代から続けてきた情報システム系の勉強や仕事からいったん離れ、一般的なOLという職を選ぶことにしたのです。
蜷川 「OLという存在に興味をもち、経験したくなりました(笑)。事務系の業務をやっていたのですが、対応しなければならない仕事が多く、あらためて事務のお仕事をする方を尊敬するきっかけになりました。何事も経験してみないとわからない質なんです」
実際に事務の仕事を経験した上で、開発の方が自分の肌に合っているし楽しいということを再確認した蜷川は、また開発系の仕事へと戻ることを決意しました。そして、その後の転職2社目でサイバードに入社をしました。
蜷川 「入社の一番の決め手になったのは、人もそうですが、自分の今のキャリア状況や今後自分がどういう風に進んでいきたいかということに悩んだとき、相談できる環境があること。かつ、その先を考えられやすそうな土壌があったことでした。また、サイバードは女性のエンジニアが多い印象がありました。女性がこれだけ働いていて、継続年数が長い会社は働きやすい環境なんだろうなと、魅力を感じましたね」
その印象は入社後も変わらず。どのセクションの上長も部署問わず、誰からの相談でも受けているという環境の素晴らしさを感じたと言う蜷川。またプロジェクト進行においても、チームのみんなが調整することを厭わず、同じ目的に向けて課題があれば、共に解決していこうとする姿勢の人が多いという新たな発見もありました。
蜷川 「たとえばですが、サイバードでは新型コロナウイルスの流行以前からフレックスが導入されています。女性独自の体調不良などに合わせて臨機応変に対応ができますし、制度だけでなく、現場でもそういったことを言いやすい環境であるというのは常に感じているところですね。
また、プロジェクトで、個人的な問題からチーム全体の問題も含め、何か体に不調をきたすようなスケジューリングは取らない方針にしようというのは明確に出ていました。それが女性にとっても働きやすい職場である要素の一つであると思います」
大切なのは「永く続けられる」こと
蜷川は、今仕事をする上で「無理せずに働く」ことを大切にしています。
蜷川 「実は、わたしは体を壊さない人間なんです(笑)。ただ、自分ができると思っている仕事の量と他の人ができる仕事の量は違います。なので、無茶をしないことを自分にも課していますし、周りのメンバーにも同じ考えで動いてほしいと考えています。
そのためにも、個々のメンバーのスピードによってタスクを立てるようにしています。スピードと一言に言っても『速さ』だけを追求するのではありません。メンバーが行う作業の正確さや育成にかかる時間、アフターフォローなどを含めた上でのスピードです。そのために、個人個人との話と仕事の進捗具合を見た分配を共に実践していますね。特にメンバーとの対話は大事にするようにしています」
コロナ禍で出社をしなくなってからは、週に必ず1回以上1on1を実施し、現状や雑談からメンバーのヒアリングをするように心がけている蜷川。その話の中で、今のタスク状況が適切な状態にあるのか、もう少し高い目標を持たせた方が伸びるのかなどを見極めながらタスクを渡していくようにしています。
蜷川 「もともと私は、話を盛り上げるのがあまりうまくなくて(笑)。仕事以外の話やメンバーの話を、限られた時間で引き出すことが難しいなと感じていたんです。新型コロナウイルス流行以前は同じ場所で仕事をしていたので、メンバーの顔つきやちょっとした動きとかで少しは反応できていました。
ただそれが一切なくなってしまったので、これは無理矢理にでも時間を作らないと疎遠になって、何もわからなくなってしまうなと思いました。対話がなければ、淡々と作業が進んでいくだけだと思うんです」
もともとマネジメントは得意ではないという蜷川ですが、チームメンバーがこれからもエンジニアとしてやりがいを持って仕事ができるように、自身もモチベーションを持って末永く働いていくためには、自分自身がマネジメントへ挑戦していくことも必要だと考えています。
蜷川 「よく『モチベーションはどうされていますか』という質問をいただくのですが、実はモチベーションを自分でコントロールして、あげていくためにしていることはあまりないんです。
ただ、みなさんが楽しく仕事しているときはやはりテンションが上がりますし、自分がプログラムを書いていても楽しいので、それらがモチベーションの維持につながっているんだと思います。また、やっていることに必ず何かの楽しみを見つけて作業するようには心がけていますね」
「できない」はない──目指す環境は自らが創り上げていく
今期、蜷川は新たなチームへと移ることになりました。まずはスケジューリングの上、進行管理をしていくことが求められています。先の見えないスケジュールを立てていると、先が見えなさすぎて疲弊してきてしまいますが、蜷川は見通しを立てられるような進行管理を目指しています。
蜷川 「“できることはやる”という無理のない範囲で設定しても、その“できること”が増えれば、エンジニアのみなさんの業務以外でもやりたいことが見つかると思うんです。そして、新しいことへの挑戦もできると思っているので、そこのお手伝いができればいいなとは思っています」
「できない」とシャットダウンするのではなく、できるようにするためにはどうしたらいいかを共に悩んで考え、より良い方向や結論を導き出せるような、お互いが寄り添っていけるチームビルドを蜷川は目指しています。
また、女性エンジニアの仲間をもっと増やしていきたいという想いも持っています。100%リモートワークになったということもあり、出社をしていたころよりも仕事と家事の両立がやりやすい環境となりました。今まで家事をやらなければいけないから仕事が出来ないと思っていた女性の方でも、仕事ができるような状況ではあると考えています。
蜷川 「最近はエンジニア職の女性社員が少し増えてきまして、それがとても嬉しいので、まだどしどし来てくださると嬉しいです。女性が多いと、女性ならではの相談がしやすい環境ももっと作れると思います。
たとえば仕事をしている上で、家庭の事情や諸々の事情で業務がうまく回らないとなったときに相談しやすい場が増えると、心安らかに仕事ができるのではないかなと思っているんです。
私自身、女性の同僚は女性特有の気持ちを汲んでくれて、気持ちに寄り添うアドバイスをしてくれたなという経験があります。ですので、メンバーに対して自身がそんな存在になれればと思います」
現在はマネジメントに力を入れ、エンジニアとしてのプロフェッショナルの方向は脇に置いている状況の蜷川ですが、時間ができてやれるようになれば、新しい開発なども自分なりに取り組みたいと考えています。
「できない」はない。何かを諦めることなく、しなやかに、これからも「やりたい」ことを実現する蜷川らしい道を切り開いていきます。