【ゆる恋】第6回 初級編 プロットの作り方
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さて、今回のゆる恋は、「プロットの作り方」のお話です。
プロットとはいわば、物語の設計図です。
設計図なのに細部まで凝りに凝った美しい絵を描いても、あまり意味がありません。
かといって、定規も使わず適当な設計図を作ると、実際の工事に入った時、大幅に支障をきたします。
サイバードでは、下記のようなプロットのフォーマットを使ったりしながら、長過ぎず短すぎないプロット作りを心掛けています。
▼参考:CYBIRD プロットフォーマット
フォーマットの使い方は、こんな感じです。
①ストーリー要約 (何の/どんな話?)
最初に、これから書く物語を、数行で簡単に説明しましょう。
映画脚本でいうところの、ログラインと呼ばれるようなものです。
エンターテインメントにおいては、「この話って、つまりどういう話?」と、ひと言で言える物語ほど、わかりやすい面白さがあります。(ストーリー構成の型がバシッと決まっている、という意味です)
たとえば。
「我がままで横暴な王様(攻略キャラクター)が、心の清い花売りの娘(主人公)と出逢い、反発しながらも惹かれあい、恋に落ちる中で成長し、彼女を妻にし、善き王となる」
とか。
これくらいざっくりしたあらすじでも、何となくどんな話かイメージして頂けるのではないでしょうか。
ちなみに、上記の要約をもっと簡単にすると……
「身分差による価値観の違いを持つ者同士が、交流を通じ互いを認め合い、成長する話」
となり、王道のストーリーの型が見えてきます。
「大長編を書こうとしているのに、数行で要約するとか無理!」と感じる場合もあると思います。
そういう時でも、一番大事なところだけを抽出し要約しておくと、物語全体が俯瞰できて便利です。
またゲーム作りにおいては、「こういう話をこれから作ろうと思ってるよ!」とチームメンバーに説明するためにも、要約した文章は必要です。
はじめに要約の文章を作るのが難しければ、物語の起承転結を考えたあとで、「じゃあこれって、つまりどんな話?」と要約に戻るのもアリです。
自分が書きだそうとしている物語の全体像を、改めて把握することができます。
②恋愛ステータス変化 Before → After
恋愛のストーリーにおいて、相手に対して抱く感情が、冒頭とラストで大きく変化していると、より大きなカタルシスが得られます。
端的に言うと、「攻略してやったぜ感」が出ます。
たとえば、①で挙げた要約のストーリーにのっとると、下記のように設定できるでしょう。
▼王様(攻略キャラクター) 恋愛感情の変化
[Before] 生意気な小娘。お前に何がわかる! と思うのに、妙に気になる。
[After] 自分の苦悩や隠れた優しさをわかってくれる理解者。支え合いたい相手。愛しい。
▼花売りの娘(主人公) 恋愛感情の変化
[Before]我がままで俺様で偉そうな人。大嫌い! と思うのに、妙に放っとけない。
[After] 強い信念を貫こうとしており、優しさも隠し持つ不器用な人。大好き!
③価値観・状況の変化 Before → After
ストーリー構成において、キャラクターの「価値観」や「置かれている状況」の変化を描くことが、物語の面白みに繋がります。
冒頭とラストを比較した時、どれだけドラマティックな変化が起きているか、をチェックしましょう。
たとえば、①で挙げた要約のストーリーにのっとると、下記のように設定できるでしょう。
▼王様(攻略キャラクター) 「価値観」の変化
[Before]国の平和を保つには、民に恐れられたとしても、厳しい支配が必要。それが国のためだ。
[After] 恐怖による支配だけが国を守る方法じゃない。理解してもらおうと尽くす道もある。
▼花売りの娘(主人公) 「置かれている状況」の変化
[Before]花売りをして暮らす庶民
[After] 王の妻
④あらすじ(起承転結)
①②③を設定したあとは「①②③を実現するために、具体的にどんな事件がふたりに起きるか」のあらすじを起承転結で簡潔に考えていきます。
ちなみに、伏線は青文字で書くようにしています。
うっかり伏線回収を忘れないためです。地味に便利です。
起承転結の長さの配分は、ざっくり下記のようになるでしょう。
起10% 出逢い
承60% 交流
転10% 致命的なピンチ!
結20% 根本的な解決! その後……
一番お客様が楽しみたい「恋する過程」に文字数を割きましょう。
出逢いまでが長すぎるとだれてしまいますし、ラスト直前のピンチが続き過ぎても緊張感が薄れます。
「要約やキャラクターの変化は考えたけれど、それを具体的に表現するエピソードが思いつかない……」という時は、「恋愛ステータスの4段階変化」をとっかかりにすると、考えやすいです。
【ゆる恋】第3回「物語の骨組みを作る・後編」をご参照ください。
余談ですが。物語を作る際は、漠然と「思いつかない/わからない」と悩むのではなく、どの部分が思いつかないのか、何がわからないのか、“具体的に悩む”ことが大事です。
これで、物語の大まかな設計図を作ることができました。
あとは、実際にゲーム画面に表示される文章「本稿」に着手するのみです。
尚、10万文字を越える長編を書く場合は、1話ごとに、どのエピソードまで進めるかを割り振った「箱書き」を作ると、起承転結のバランスが崩れてないか、より丁寧にチェックできます。
――というわけで、第6回は終わりですが、最後にひとつだけ。
プロットはあくまで設計図です。
書き進めるうちに、キャラクターが勝手に成長したり、新たな展開が生まれたり、プロットの齟齬が見つかったりすることも、よくあります。
そういう時、設計図に囚われ過ぎる必要はありません。
当初の設計を見直して作り直したり、本稿を思うがままに書いたあとで再度プロットに落とし込んで問題ないかチェックしたりと、様々な打ち手が考えられます。
シナリオを執筆する目的の本質は、「面白い物語を作って、読み手に喜んで頂くこと」です。
そこを忘れず、「プロットを作る」という手段を、有効活用してみて下さい。
――そんなこんなで、今度こそ本当におしまいです。
「ゆる恋」があなたのシナリオ執筆の一助となれば幸いです。
ゆる恋第6回 おわり
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第0回 ゆる恋シナリオ講座スタートのお知らせ
第1回 初級編 キャラクターを知って、動かす
第2回 初級編 物語の骨組みを作る 前編
第3回 初級編 物語の骨組みを作る 後編
第4回 初級編 なぜ書き方を勉強しなくちゃいけないの?
第5回 閑話休題 密着! CYBIRDシナリオライターの1日